熊本市のスピーチ・挨拶・オンライン対応の個人レッスン、企業研修のパーティープロ

TOP
お知らせ
ブログ
お問い合わせ
その他

【第40回】世にも不思議な物語 (前編)

我が家の仏壇の片隅に、下の写真のように、一匹のワンちゃんが鎮座ましましています。妻のいとこ(お寺の住職)からもらった血統書付きの秋田犬の赤ちゃんでした。「リキ」と名付けました。


大きくなるのが早くて、知り合いの福山さんに手伝ってもらい、ブロックで基礎をつくり、大きな犬小屋を建てました。ある日酔っぱらって帰った私が、“リキ、今帰ったよ”って小屋に入っていったら、酒の匂いプンプンの私を避けるように小屋の片隅でじっとしていたリキ。大晦日、リキも一緒にと思って座敷に上げて、義父と口論になったこと。数え上げればきりがないほど、私にとって、なぜかリキは特別な存在でした。

20数年前の春、4月10日の朝、10時頃・・・
私は、結構広い庭の片隅に、スコップで穴を掘っていました。もうかれこれ2時間近く掘り続け、やっと、縦1メートル横60センチ、深さ60センチほどの大きな穴になりました。ふと犬小屋の方を見ると、寝そべったままのリキが、不思議そうな顔をして私を見つめています。前日から準備していたコンパネを、トントンカンカン、穴に丁度収まるサイズの箱を作り、“ヨイショ!”と、さっき掘った穴に落とし込みました。リキは相変わらず“このおっさん、何してるんだろう?”そんな顔をして、包帯でグルグル巻きにされた傷口をペロペロ舐めています。口にこそ出せないものの、さぞ痛いに違いありません。“リキは、この箱の中に自分が入るなんて、何も知らないんだ!”そう思うと、汗と一緒に涙が溢れ出てきました。

あれは確か、リキが我が家の一員になって6年程経った頃でした。いつものように夕方の散歩に連れてゆこうとしたら、動こうとしないんです。秋田犬の成犬ともなると結構大きくて、一筋縄では動きません。無理やりグーっと引っ張ったら、やっと歩き出しました。ところが、左前の足を引きづってるんです。“あれっ?”・・・二日ほどは無理やりに散歩に連れて入ったのですがどうにも変だ!・・・近くの動物病院で検査をしてもらった結果「左前足の骨肉腫」でした。

「骨肉腫」とは、骨と軟骨に発生する悪性の腫瘍のことで、短い期間で肺に転移し、死亡率の高い病気だとのことでした。“先生、骨肉腫の足を切断してやってください!” “そんなことをした瞬間がん細胞が全身に散ってすぐに死にますよ” “じゃあどうすればいいんですか?” 間髪入れずに先生が言いました。“抗がん剤しかないですねえ”・・・

リキの足は日ごとに腫れてゆき、そこが裂けて骨が顔を出すようになりました。年老いた義母が、毎日毎日患部を消毒し、グルグル包帯を巻いてあげた後、リキの好きな唐揚げを小さくカットして“はいリキちゃん食べなっせ!”とやさしく食べさせてくれていました。毎朝私は、いつも散歩で行く公園まで、リキを抱っこして行き来しました。そんな日々がどれほど続いたでしょうか、家族で相談した結果、リキの安楽死を決めました。

翌日ホームセンターでコンパネを買って帰り、家で寸法通り切っておきました。そしてその当日の朝、私はランニング姿でスコップを手に、庭の片隅に穴を掘り始めました。

獣医の先生が来られたのは夜8時前、家族皆で送ってあげようと思っていたのに、皆急用ができ残っていたのは私一人でした。先生が帰ったあと、まだ温かいリキの身体をずっと一人で撫でてあげていました。

不思議です。確かリキが子犬で我が家にきた時も私一人だった。そして亡くなるときも私一人・・・・・。リキは “あるメッセージを伝えるために、私の前に現れた” と言うのが分かるのは、その一年後のことでした。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


関連記事

PAGE TOP
TOP