無理もありません。ほとんどの人は、大勢の前に立った瞬間あがるのは普通のことです。堂々と話しているように見える人も、緊張しているのです。心配しながら話しているのです。それでいいのです。“あがる”ことは、聴衆に敬意を表することでもありますから、人前で少しはあがった方がいいのです。と言っても、心臓がパクパク、声が震える、頭が真っ白になる etc のは嫌ですよね。どうにかしなければ一生、人前で話す恐怖から解放されないのですから。そこで、いくつかお話しますので、一度か二度試してみて下さい。ひょっとして上手く行くかもしれません。
森と勝負しない、一本一本の木と勝負せよ です。
例えば50人の前で話すとしましょう。この時あなたは、どこを見ながら話されますか?8の形で見渡しながら話すとあがらない、とか、話す前に、手のひらに人と書いて飲み込む、とか、色々言われていましたが、実際に大勢の前に立った瞬間、緊張でガチガチになり、あげくの果ては、“覚えていることを早く言い終えてしまおう!”と思うばかりに、聴衆以外の一点を見つめたまま一気に話し始める・・・・・・こんな負のスパイラルに陥ってしまう方もいるようです。
そこで私達プロが、いつもどんなふうにあがりを軽減しているかをご紹介します。それは、上に記した「森と勝負せず一本一本の木と勝負しているのです」。つまり、50人全員と勝負すれば1対50で、その圧に押しつぶされてしまうのは当然です。100個の眼で見つめられているわけですから。私たちは、森全体(50人全員)に向かって話したりは、決してしません。一言一言、一本一本の木(一人一人)に向かって語りかけるのです。1対1なら、負けることは滅多にありません。どうかすると、私と目が合ったある人は、サッと目をそらせたりします。そんな時は“オッ勝ったぞ!”なんて内心思うんです。
こんなことを言うと、“聞き手の目を見たりしたら話すことを忘れてしまいそうだ”なんていう方がいらっしゃいますが、逆です。一人一人に向かって話すと、聞き手の反応が手に取るように見え感じることができるので、話の自然な間もできてくるんです。相づちを打ってくれていたら、“アツ分かってくれてるんだ” ちょっと首をかしげていると“今のは少し分かりにくかったかな?”ともう一度同じことを繰り返したり・・・・メリットが沢山あるのです。そして、一本一本の木に向かって語りかけるあなたの話は、やがて森全体の奥まで響き通るようになるのです。
お分かりいただけましたでしょうか?良ければ一度試してみて下さい。ちなみに、一人一人の顔を見る長さはどれくらいですか?というご質問も良く受けるんですが、そうですね。ワンフレーズか、ツーフレーズ毎に視線を変えてゆくぐらいがベターだと思います。