私の講座の受講生、大手土地活用会社の営業所所長で、Nさんという方がいました。数カ月後に、地元の地主様数十名を招き、土地運用セミナーを大々的に行うことになりました。各ジャンルの先生方の講演があり、その後の相談会と、丸1日かけたセミナーです。その冒頭で、Nさんが主宰者挨拶をすることになったので、マンツーマンでトレーニングが始まりました。
通常は、会社の規模や実績等を、これでもかと言う位アピールしたいところですが、Nさんの希望は、講座で学んだ「ビジュアルストーリー」、つまり、ある日ある時のある場面を映像化することによって、お客様(地主様)の心を動かしたいのだ!と言うことでした。早速準備に入り二人して原稿を作成しました。3分以内のスピーチなので、本人も覚えるというので暗記して、繰り返し繰り返し、50回以上テープに吹き込んでは聴き、を繰り返しました。
4月の本番でNさんはこのスピーチをセミナーの冒頭で話しました。翌日、参加していた何人もの地主様から「昨日の所長の挨拶を聞いて決めたよ!契約したいので来てくれないか?」と電話が入りました。その結果、数億円もの契約が決まりました。たった3分間のスピーチが、多くの地主様達の心を動かしたのです。Nさんはその後も、年間十億円という目標を達成すべく頑張られました。
これは前回のブログで「話を映像化して話す」ことをお話しましたが、なかなかご納得いただけなかったかも知れないので、今回この実際にあった事例をご紹介しました。Nさんが話したスピーチの原稿は下記の通りです。
実はわたくし、お土地には、地主さまの魂が、深くしみ込んでいるんだなあ!と痛感したことがございます・・・・・・・・・・。あれは確か、今から7年前の夏、忘れもしません7月25日の出来事でした。北九州市のYさまから、その2か月前に、ご契約をいただいておりまして……ちょうどその日地鎮祭が行われていました。Y様は、明治生まれの95歳で、おみ足が悪く、私共がお会いする時はいつも車いすか、ご家族の方に両脇を抱えられていらっしゃいました。
ところが、地鎮祭が終わり、私どもが後片付けをしておりましたら、なんと、Y様がとても軽い足取りで畑仕事を始められました。私とても驚きましてY様に駆け寄り「お身体だいじょうぶですか?」とお聞きしましたら、Y様がこうおっしゃったのです。
「なーん、わしゃこの畑で90年毎日仕事しとるけん、こん畑ん中なら、なんぼでも元気が出るたい!ここに建物が建つんば正直さみしかけど、子供たちが決めたことやし……もうよか!あんたたちば信用しとるけん、頼むバイ!」と、私に背中を向けたままつぶやかれました。
わたくし、その言葉を聞き、Y様のお背中を見ながら改めまして考えました。我々がお任せ頂くお土地には、Y様のように、90年間、いえ、200年、300年以上も、ご先祖様の思いと魂が込められていることを気づかされ、私共も、本当に魂を込めて仕事に取り組まねば!そう決意いたしました。あの日のY様のお姿と言葉は、今も私の、仕事に取り組む精神的な支えとなっております。
勿論、メラビアンの法則にあるように、聞き手の印象に残るのは、内容(コンテンツ)が7%であとの93%は、どう話すか?(デリバリー)です。上記の原稿を読んだだけではピンと来ないかもしれません。Nさんは、50回以上練習することで、この93%を手に入れました。
最後に、このビジュアルストーリーが、学校説明会や会社説明会に、驚くほどの成果を見せることに気づいていない方が多いのも事実です。
コメント